友人に誘われ、絵本作家荒井良二さんの新作刊行記念ライブに
行ってきました。
本の名前は「あさになったのでまどをあけますよ」。
初めて見た荒井さんは、気のいいおもしろいおじちゃんでしたが、
ライブの合間のお話を聞いているうちに、とてもとても情が深く
熱い心を持っている、少年のままのひとなんだと分かりました。
震災後「自分になにができるのか」と深く落ち込んだそうです。
被災地でワークショップを開き、被災者の方と触れ合っている間に
自分の使命は「あさになったら、とりあえずカーテンを開けて
窓を開けてみること」だと思ったそうです。
あさになって窓を開けたら、いつもの景色がひろがっている。
それがどんなに美しく、ありがたいものか。
荒井さんの歌は決して上手くはないのですが、とにかく魂が
こもっていて、途中少し涙ぐんでしまいました。
中でも心に残ったのは、終盤に荒井さんが読んだ詩。
『鮪に鰯』 山之口貘
鮪の刺身を 食いたくなったと
人間みたいなことを 女房が言った
言われてみると ついボクも人間めいて
鮪の刺身を夢みかけるのだが
死んでもよければ 勝手に食えと
ボクは腹立ちまぎれに 言ったのだ
女房はぷいと 横にむいてしまったのだが
亭主も女房も お互いに鮪なのであって
地球の上はみんな 鮪なのだ
鮪は原爆を憎み
水爆には また脅かされて
腹立ちまぎれに 腹立ちまぎれに
腹立ちまぎれに 現代を生きているのだ
ある日ボクは 食膳をのぞいて
ビキニの灰をかぶっていると 女房に言うと
焦げた鰯の その頭をこずいて
火鉢の灰だと つぶやいたのだ
落ち込んでいた荒井さんを勇気づけてくれたのは、荒井さんと
同じ山形出身の歌手、岸洋子さんの「夜明けのうた」だったそうです。
この歌を、ほとんど叫ぶようにして、パンクに、ロックに、
ブルースに歌う荒井さんが印象的でした。
「東北の空」はずっと広がっている。
その美しい光景が目に浮かびました。
岸洋子/夜明けのうた
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