2つの季節が巡って9月になった。秋冬シーズン到来だ。
最近たてつづけに山関連の本を何冊か読んだ。
ヨーロッパアルプス3大北壁の冬期単独初登攀に成功した
長谷川恒男の著書と、今なお挑戦を続けるソロクライマー
山野井泰史のドキュメンタリー。
長谷川恒男は真面目で冷たい感じの人だと思っていた。
でも実際は結構剽軽な人で、若い頃は尖っていた印象が
あるものの、様々な場所で開かれた講演の内容は冗談
混じりで「もっとたくさんの人に山を身近なものに感じて
欲しい」という思いに溢れている。
過酷な登攀と同時に、執筆活動や社会活動(講演、ガイド、
カルチャーセンターの講師、ジュニアスクールなど)を
積極的に行っていたことを初めて知った。
死が近づくにつれて、穏やかな自然と厳しい自然の両方を
本当に愛おしく思うようになっていく心の過程がよくわかった。
生きぬくことは冒険だよ 長谷川恒男著
山に向かいて 長谷川恒男著
一方山野井泰史のドキュメンタリーは、性格の違いもあってか
「多くの人に伝える」というより「とにかく自分の好きなこと
を突き詰める」という内容だった。
いろいろな人が山野井泰史のことを「子どもみたいだ」と
いう。性格が子どもっぽいというよりは、とことん好きなこと
だけを続けられる純粋さを持った貴重な人なのだと思う。
たったひとり、最小限の荷物で攀じる恐怖よりも、山と一体
になる喜びのほうがずっと大きいから、まだまだ挑戦は続く。
「ソロをずっと続けてきて、このごろとみに、子供のころの
感受性が高まっているような気がする。物事に素直に感動できる
し、命あるものをいとおしく思えるし、たとえ相手が自分のことを
嫌っても、そのひとを思いやることができるし...。」
P282より抜粋
歳を重ねるごとに、子供のころの感受性が高まっていくなんて。
ここまで過酷な登攀を続けている人が、今この瞬間も奥多摩の
自然に囲まれて暮らしていると思うと不思議...。
つい最近も7010mの山に行っていたようで、山野井通信の
続きが早く見たいものです。
ソロ 単独登攀者 山野井泰史 丸山直樹著
二人に共通しているのは、高い山の頂に立つという結果よりも
そのプロセスを重視していること。余計なものをどんどん
削ぎ落としていること。自分が美しいと思う山に登っていること。
山に挑むのではなく、山という動かないけど変化し続ける自然に
回帰していること。
なるべく単純に生きて、自然のサイクルの一環に入っていく
ことができたら...としみじみ思った。
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